No.6 初等普通教育の根本とは?

重松鷹泰の著書「初等教育原理」において,氏は次のことを指摘している。

 

初等普通教育が人格形成の基礎をかためるものであることは,すべての人に認められている。ところで,その内容については,大きく二つの見解が対立している。

 

と述べている。「大きく二つ」についてみていく。

 

1.社会人として生きていくための生活技術(常識や作法・事物の操作方法)などを修

  得すること,さらに将来の発展のために必要な(そういう見地から精選された)基

  本的な知識を習得することが,基礎能力啓培の内容である,とするものである。

 

2.他の人びとと協力して生きていこうとする態度を洗練して行くこと,与えられた知

  識を受け入れるだけでなく,否それよりは,自分で追究して知識を形成して行く力

  を伸ばすこと,その両者の根底にある考える力,追究する力を育成することこそ,

  基礎能力の啓培である,という考え方である。

 

あなたはどちらの立場に立つでしょうか。

 

重松先生は,2.の立場です。

初等普通教育の根本は,追究心の育成,思考力の啓培にある

と述べています。

 

現在の一般的なとらえ方は,前者でしょう。

テストの点数などの数値的なものに”学力”の目が向けられ,

本当に付けなければならない力が見落とされていると感じます。

 

また,教師だけがこのような認識を転換させただけでは何も変わりません。

入試制度の見直しを始め,家庭や地域社会の”学力”のとらえ方を変えていく必要があります。

 

重松鷹泰(1971)『初等教育原理』,国土社.